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2016/10/30

組織開発の事例を報告した論文が「実験社会心理学研究」から刊行されました。下記,本文リンクより,どうぞご覧下さい。

土屋耕治 (2016). 組織の「時間」への働きかけ: 組織開発における組織診断の事例から 実験社会心理学研究, 56 (1), 70-81. doi: 10.2130/jjesp.si2-5

本文リンク→https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjesp/56/1/56_si2-5/_article/-char/ja/

概要説明

組織開発の組織診断が,組織のダイナミックスにどのような影響を与えるのかを事例から考察したものです。本論文は,「グループ・ダイナミックスの〈時間〉」という特集の一部を構成しています。下記の特集論文企画者の評にあるように,インタビューをまとめあげたエスノグラフィ (民族誌) という形式を取っています。

組織開発の実践家,心理学の専門家の双方が了解できる論考となるよう心がけました。

働きかけによって実際に組織のダイナミックスがどう変化するのか。私は統制された実験室実験も好きですが,エスノグラフィという切り口が,現象を見ていく新しい視点を提案できれば幸いです。

下記は特集論文企画者の紹介です。

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つづく「組織の「時間」への働きかけ」(土屋論文)では,組織開発の現場から,組織の「今」が共有された上で,組織の時間的展望を発達させることが個々人の主体性や能動性の喚起につながるという興味深いプロセスが,詳細なエスノグラフィとともに紹介されている。対象となっているのは,土屋がコンサルタントとして組織診断に関わった出版や研修等を業務とするA社である。

土屋は,個々のスタッフ全員にインタビューを実施し,それを報告書としてまとめてフィードバックする。それに対するスタッフの反応はアンケート結果としてまとめられ,ふたたびスタッフにフィードバックされる。これらの組織診断を経たその後の様子について,土屋はフォローアップ調査として,再びインタビューやアンケートを行い,フィードバックを行う。この繰り返しの中で,組織の「今」が「過渡期」として意味づけられ,そこからこの組織がどこに向かおうとしているのか,時間的展望が未来に向かって共有される。

興味深いのは,土屋が「組織診断の介入的意義」の中で述べるコンサルタントの「プラットフォームを提供するという働きかけ自体が組織のダイナミックスに影響している」という点である。コンサルタントという外部者との関わりが,組織の時間を重ね合わせたり,加速させたりしていく。このことは,これまで組織論の中で議論されてきた,現在や過去についての意味づけ(センスメーキング),そこから未来について意思決定をすること(デシジョンメーキング)に並んで,これらの背景に「ペースメーキング」ともいえる問題の次元が存在することを示しているのではないか。

外部者が何らかの現場に関わる中で,そのペースを速めてみたり,逆に緩めたり,引き戻したり,あるいは一度距離をおいて待ってみたりするような関わりは,アクションリサーチにおいて往々にしてあることである。土屋論文は,これらの実践知を今一度,時間論的な観点から議論してみることで,組織論やアクションリサーチに新しい地平をもたらすのではないかと期待させる。

宮本匠・日比野愛子 (2016) グループ・ダイナミックスの〈時間〉p46より

特集紹介リンク→https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjesp/56/1/56_si2-0/_article/-char/ja/

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※組織開発の倫理に関する発表資料は,こちらのページからご覧下さい。